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研修医として病院に勤める

信州の山の中でめしを食うための仕事を始めたのだった。1000ベット近い病床を有する大規模な総合病院であったが、医師の数は40名そこそこで、U医師たち1年目の研修医もすぐに実際の診療に駆り出された。貧血から始まり、肺癌、肝硬変、白血病などの患者を担当させられ、毎日、教科書とにらめっこをしていた。指導してくれる医師の数が大学病院などに比べると極端に少なかったから、多くの初歩的な技術や知識を独学しなければならなかったのである。U医師が最初に担当した患者は佐藤周一という43歳の男性だった。坊主頭で知能の発達障害のあった彼は付き添っている老いた母親から「Sちゃん」と呼ばれていたので、U医師や看護婦たちもそう呼ぶようになった。Sちゃんは土木作業員として働いていたが、1週間前から腹を痛がり、めしを食わなくなった、と母親に連れられてU医師の外来に来たのだった。外来の診察で上腹部に胃癌と思われる固い腫瘤を触れ、膨れた腹には腹水の貯留を思わせる所見があった。