荷物の詰め替えは、カメラを隠すことが目的だった。以前、この国境を越えたとき、イラン側のイミグレーションで、同行したカメラマンが持っていたカメラが封印されてしまったのだ。「この国では写真を撮ってはいけない」係官はそういい放ったのである。係官はカメラマンのカメラをひとつの鞄に集めさせ、その口をぎりぎりと針金で巻いてしまったのである。偶像崇拝を禁止するイスラムの教えと拡大解釈することもできないことはなかったが、これには少し焦った。
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もっともイランの旅の途中で、その針金がすっぽりと抜けてしまうという間抜けな結末を迎え、カメラマンは問題なく写真が撮れたのだが、今回はどんな対応に出るのかもわからなかった。僕とH君がもつデジカメはたぶん問題がなかった。引っかかるとすれば、カメラマンが持参するプロ用のカメラ数台とレンズだった。僕らはカメラマンのカメラをそれぞれが分担して持つことにした。ひとりが注意を受けても、ほかの誰かがすり抜ければ問題はないという作戦に出たのだった。これで用意は万全のはずだった。