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勉強しなさいと言うと、白髪を抜き出す

息子には悪いが、腹を抱えて笑ってしまった。一週間後、先方のお母様のお取り計らいと思うのだが、お嬢様にはどんぐり頭に目をつぶってもらったようで、彼女のご希望の熊の縫いぐるみを抱えて、息子はそれでもうれしそうにどんぐり頭で無事およばれにあずかった。そんなことがあって、私も、床屋さんに任せる時が来たわと素直に手を引いた。今、中学生になった息子は、よく私の白髪を抜いてくれる。勉強しなさいと言うと、白髪を抜き出すので手放しで親孝行といって喜んではいられないが。最近めっきりふえてきた白髪。抜ききれないからもういいよというのだが、それでも、もう一本、もう一本と抜いていく。髪をいじられるってなんとも快い。息子の心臓の鼓動や、息遣いがすぐ近くに感じられていい気持ちで眠くなる。時々二本いっしょに抜いて「いけね!」と叫ぶ声がする。母親が眠りかけた幼い我が子の髪をなでる。夫が出産を終えたばかりの妻の髪をなでる。立派な大人に成長した子供が、病の床に伏している老いた母親の髪をなでる。義父は、冷たくなった義母の髪をなでていた。髪ってあたたかい。「ほら、リキ(犬)の毛みたいだよ」。うとうとしかけた私の手に、突然渡された白髪の束。なんともわびしい限りだが、幸せなひとときでもある。
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